【6棟目】絶対買わないと決めていたエリアで買った築45年の築古戸建はお墓の横

物件
6棟目に購入した戸建

4ヶ月で5棟を一気に買い進めてきた僕は一旦休憩することにした。

最後に買ったのがアパートだったこともあり、ちょっとした達成感も感じていたところもある。

何よりかなり現金を突っ込んで買い進めたこともあったため、次は5棟分の家賃が貯まってからその家賃収益で買いたいと思っていたところが一番強い。

最後3棟目のリフォームが一番時間がかかったこともあり、2018年10月末に決済してから3月中旬に仕上がり、4月に客付けを完了。

ここから僕は物件情報は「見るだけ」に徹して購入を一旦停止した。

そして時は流れて翌2019年11月、彼からの電話で再び僕は動き出すことになる。

彼から届いた1通のメール

手持ち物件の最終客付けを完了したのが2019年の4月。

この物件は僕の3号棟戸建で、最大20cm以上の傾きやバランス釜、壁からの雨漏りなどボロボロさの極みに達していた点と、どうせ直すならもう徹底的に地域一番物件をさらに突き抜けていい物件に変貌させてやろうと資金と時間を投入していた。

結果地域最高値で決まったのはもちろん、募集からわずか4日で申込みをGETしていた。

その物件の内容はこちら↓

その後別物件でアパートの1室が空室になったのでリフォーム&客付け作業を行ったが、2018年3月から本業を全て停止した上で全時間を不動産に突っ込む姿勢を一旦停止。

改めて本業の方や新たに開設した不動産コミュニティの立ち上げに日々邁進していた。

コミュニティ活動の一環としてYouTubeチャンネルも開設

不動産賃貸業を通じてサラリーマンの起業を応援するYouTubeチャンネル

クリエちゃんねる

そんなある日、彼から1通のメールが届いた。

上記にリンクしてある記事で紹介している3号棟物件の売買仲介会社の責任者、アキラ先生(仮名)だ。

布施明
布施明さんに激似な「アキラ先生」

その時のメールがこちら。

不動産会社からの物件提案メール

多くを伏せ字にせざるを得ないのでちょっと分かりづらいが、2件の物件を紹介したい、との内容だった。

そしてそれに対して返答したメールがこちら。

返答したメールの内容

要するに路線価ベースで見ると千葉県野田市の物件は土地値が付かないのに対して、茨城県取手市の方はギリギリ路線価が付く、といった内容で返答。

取手は販売価格が460万円、野田のほうが590万円。

この時正直に思ったのが下記だ。

「どっちの物件も微妙~。自分的対象エリアじゃないし売価も高いし全然欲しくね~っ」

とはいえ、せっかくアキラ先生が送ってきてくれたわけだし、無下にするわけにもいかない。

買う気は全くゼロだがとりあえず当たり障りのない返答をした。

するとアキラ先生から直電がかかってきた!

明「いや~お久しぶりです。どうですかね、この物件。」

僕「うーん、正直全然欲しくないですね…。すいません。」

明「いやいやそんなこと言わずに一度見るだけ見てもらったら。」

僕「いえ、僕そのエリア欲しくないんですよね。

明「価格交渉はさせていただきますから。ぜひ一度見てほしいんですよ。」

このアキラ先生、物腰は柔らかいのだが、さり気なく押しが強い。

狙いすましたターゲットにはどこまでも食らいついてくる、熟練かつ百戦錬磨の敏腕売買仲介なのだ。

僕「・・・そうですか、じゃあとりあえずもうちょっとリサーチしてからまたご連絡してもいいですか。」

明「もちろんです。ではご連絡お待ちしておりますね。」

とりあえずこの日は逃げるように受話器を置いた(スマホの「切」をタップ)。

彼が僕に「どうしても」見て欲しかった理由とは

アキラ先生から連絡が来たのが10月14日。

その後僕は紹介された物件が1mmも欲しくなかったので放置プレイを実施。

しかし、世話になっているアキラ先生のことをやはり無下にする訳にも行かず、重い腰を上げてなんとなく周辺相場家賃のリサーチから開始、するとやはり微妙すぎた。

家賃平均は5万円、頑張っても取れて5.5万円。

知り合いで詳しい方に相談してみても、「そのエリア超弱いですよ」と言われてしまう始末。

ダメだ、やはりない。この物件はない。

ただアキラ先生には返答すると伝えた以上、何らかのアクションは起こさねばならない。

はー、ほんとにもう、嫌だな~面倒くさいな~と思いつつ、下記のようにメールした。

取手の物件ですが、リサーチしてみたのですがやはり賃料が
取れて5,5万円いけば上出来なエリアだと思われますので、
昨日お伝えいただいた値引きの上での金額でも購入は難しいかと思います。

見てみないとなんとも言えませんが、
築年数的に見ても修繕費や今後のランニングコストも掛かる可能性を考えると
かなりご迷惑かつ売り主様にも失礼な指値で考えなければならなくなりますが、
それでもし重ねて無礼な金額提示をご承知いただけるようでしたら
内見にお伺いさせていただきたく存じます。

物件自体はどんどん買いたいと思っておりますので、
今後もご紹介はお願いさせていただきたく存じます。

このように、買わない可能性はゼロではないけどもうほとんど”お断り”とも取れるような内容で、丁寧にご返信差し上げた。

アキラ先生とのご縁は切りたくなかったし、今後も物件はご紹介いただきたい。

でもこの物件はない。なさすぎる。買わないと思っている物件を見に行くのも面倒だし、やんわりとお断りという日本人特有の「匂わせ拒否」で出したつもりだった。

ところがこのメールを出してすぐアキラ先生からまたしても電話がかかってきた!

うへ~、やだなあ。。

僕「はいもしもし。」

明「メール有難うございました。ではとりあえずいつ見に行きますか?」

僕「いやすいません。多分、というかほぼ買わないですよ。見に行くだけ無駄なお時間取らせちゃうと思います。」

明「いえいえ、とりあえず行きましょう。いつがよろしいですか?」

僕「・・・僕もそんな暇じゃないので、、正直言うと間違いなく買わないので行きたくないんですよね。

断った。もうきっぱり、完全に断ったよオレは!

ところが彼はこれくらいで諦めるメンタルではなかった。熟練手練敏腕仲介、数々の修羅場をくぐり抜けてきた強敵(とも)だ。僕のような新米大家など赤子の手をひねるよりも簡単なのだ。

明「いえいえいえいえいえそんなこと言わずに!とにかく来てください。あなただけにはどうしても見てほしいのです。

僕「・・・なんなんですか、そんなこと言って。なんで僕だけに見てほしいのですか?」

明「以前に買っていただいたあの船橋の物件、この前楽待で拝見しましたよ。まさかあそこまできれいに直して貸し出すなんてびっくりしたんですよ。

あんなきれいに再生できる人は見たことがありません。この物件もぜひあんなふうに再生されるところを見てみたいのですよ。

・・・これ、よくよく考えてみれば、別に僕だけに見て欲しいという理由にはほぼなっていない。むしろ一切思ってない。全く気持ちがこもっていない。理論は完全に破綻している。

しかしこれを聞いた僕は迂闊にもちょっと気分が良くなってしまった。

そしてこう返した。

僕「ああ、見ましたか。しかもあの物件4日で客付けできたんですよ。

バカだ。バカすぎる。まんまと相手の術中にハマった瞬間だ。完全なる単細胞である。

明「それはすごい。そんな風に誰もできませんよ。やっぱり凄いなあ。もうあなたしかいません。」

こんなやり取りをしつつ、押し問答しながらも完全に押し負けた僕は10月25日に内見予約を入れていた。

内見時は2019年で一番雨量が多かったあの日

内見当日。

まるでこれからの僕の未来を予言するかのように、信じられないほどの雨と風が冷たく僕に降り注いでいた。

この日は奇しくも記録に残るほどの大雨。どれくらいかと言うとWikipediaにも登録されているほどだ。

令和元年10月25日の大雨は、2019年10月25日に発生し、千葉県を中心に被害をもたらした豪雨災害である。

この豪雨では、平年の10月の1か月分にあたる雨がわずか半日で降り、千葉県で11人が、福島県で2人が死亡した。2019年12月4日、この大雨を激甚災害に指定する政令が公布された。

出典:https://ja.wikipedia.org/

「こりゃ、天も辞めておけと云うておるわい」

心のなかでそうつぶやきながら、僕はブルーな気持ちで取手駅のロータリーでアキラ先生を待った。

程なくしてアキラ先生は車で現れた。

明「いや~凄い雨ですね。こんな遠くまでわざわざすいません。」

僕「ご無沙汰してます。やばいですね。正直ほんと来たくなかったです。

明「まあそうおっしゃらずに。ささ、参りましょう。」

車を走らせながらアキラ先生は僕の気持ちを軽くするためか、軽快なトークを繰り出し僕を楽しませてくれる。

明「いや~しかし凄いですね、あの船橋の物件。この辺であれだけ手をかけて再生できる人を私は業者でも知りませんよ。

僕「いやいやいや、いいすぎでしょ。」

明「いや本当ですよ。あれ、おいくらでやられたのですか?」

僕「結構かかってますよ。ていうかあの物件、開けてみたら水道管は爆裂してるわ20cmは傾いてるわ、散々な内容でしたよ。」

明「で、おいくら?」

僕「大体200万円くらいですね。僕の中では完全予算オーバーです。もう途中でどうせなら最高の物件を作ろうと方向転換して予算は無視しました。」

明「ええっ?200万円?そんな低予算であそこまでできないでしょ。」

・・・この辺がアキラの上手なところだ。ポイポイポイポイとこちらが気持ちよくなるまでボールを次々と投げてくる。「乗せ上手」なのだ。

僕「まあそうでしょうね。死ぬ気であれこれ考えて工面してやりましたから。」

明「いやはや凄い。物は相談なんですが、これからうちのリフォーム全部受けてもらえませんか?」

僕「はい?絶対イヤですよ。僕リフォーム屋じゃないんですよ。」

明「ははははは。いや本当に真剣ですよ。ぜひ受けてほしいです。お礼もちゃんと払います。」

僕「いやないですよ…。」

”ないですよ”とか言いながら満更でもない気分になってしまっている僕がそこにいた。

そうこうしながら現地に到着。

こんな軽めのトークを噛ましている間も雨はその勢いを増していく。

そしてこの記録的豪雨がのちに僕の命運を大きく分けることになるなど、このときの僕は知る由もなかった。

物件の中身は意外とキレイな状態。そしてアキラ氏の本音とは

玄関前に車を停め、アキラ先生はおもむろに傘をさして玄関の鍵を開けに行く。

外は凄まじい雨。

僕も用意していた折りたたみ傘を取り出しそそくさと、そして速攻でずぶ濡れになりながらも必死で撮影する。

6号棟物件の外観
写真にも雨が写り込んでいる(スマホで拡大推奨)

本当は四方八方から撮影したかったのだが、雨が強すぎてそれは叶わない。

ちょっと外にいるだけで風邪引き確定、シャレにならない勢いなのだ。

やっとのことでiPhone片手にパシャリと1枚だけ外観を撮り、僕もアキラ先生も室内に逃げ込んだ。

中に入るとそこには意外な空間が広がっていた。

ん?かなり綺麗だな?残置物はあれど、とても築45年経過しているとは思えない。

仮にこのまま貸し出しても最低家賃ならそのまま住める状態と言っても過言ではない。

1F和室
1Fの和室。畳もきれいだ。
リビングダイニング
リビング。キッチンもそのまま使える。
浴室
お風呂も全然生きている。
トイレ
リフォームすら要らないほどきれいなトイレ。
2F3室
2Fは洋室2、和室1。

僕「めちゃめちゃきれいですね。新築ですかこれ。」

明「そうなんですよ。1年半前まで売主様が住んでいらっしゃいました。」

「新築ですか?」を華麗にスルーしながらアキラ先生はそう答えた。

なるほど、空き家期間が短いのは朗報だ。

空き家期間が長ければ長いほど家はどんどん痛み、老朽化した部分から腐敗が侵食していく。

ただし一部雨漏りが見受けられた。

天井の雨漏り箇所
こりゃ逝ってるね。

ダメージを受けているのは目視で確認できるかぎり、この雨漏り部分くらいだ。

このくらいちゃちゃっと直せるレベルと言っていい。

僕「雨漏り部分を除けばこりゃ完全に使えますね。」

明「そうでしょ?だから見てほしかったんですよ。」

ん?だから?なんか理由ちょっと変わってない?

そして敏腕熟練手練仲介アキラ先生は、まるで餌に食らいついた魚をさあ釣り上げるぞと言わんばかりに軽やかなトークをぶちかましてきた。

明「いやね、この売主様、相続したはいいけどもう東京に移り住んでらっしゃってね。手放したくて仕方ないんだよ。」

ん?完全にタメ語になったよね?まあ先輩だしいいんだけど。このへんも相手の懐に入るタイミングを心得ているうまい営業マンの手法だ。「私はあなたのことが好きだよ」とPRする手段と言えよう。

明「でね、売りたいのはいいんだけど近所に知られず波風立てずに売りたいらしくて。田舎では多いのよ。」

僕「で、なんで僕に白羽の矢を立てたんですか。」

「だってね、あんな絶対、誰も買いたくない、私だって嫌で嫌で仕方なかった船橋の物件をあなたは文句一つ言わずに再生させたでしょ。ていうかよく買ったなあ、あの物件って。

僕「うわーひどっ!自分で売っておいてそれはないでしょう!酷すぎるこの人!鬼畜の所業!」

明「いやいや、でもあそこまで再生させられる人は本当にいないですよ。そうそういない。それだけは本当に。あなたならこの家は任せられる。」

僕「つまり価値がないこの家も僕に売れば文句一つ言わずに買い取ってくれると。」

明「まあそうは言わないけど、不動産会社としては有り難いお客さんですよ。しかしよくあそこまでやりきったよね。普通じゃできない。」

出た。本音出た。押し付けキター。

そうなのだ。不動産会社ってほとんど手数料が入らないのにリスク満載な物件を売るとか基本的にやりたくないのだ。

けれども売主様の手前、断るわけにも行かず、なんとかしてさっさと処分したい。これが築古不動産、特に安い戸建を売っている業者の本音なのだ。

しかし、こちらとしては築古戸建再生をウリにしている以上、願ったりな依頼なのも事実。

何棟も築古物件を保有しているメガ大家さんなら確実に通ってくる道とも言える。

僕の場合も業者から指名で紹介されたのは初めて、ある意味での「やっとこの域まで来たか」感を感じたのは正直なところ嬉しくもあった。

僕「なるほどですね。うーん。そうかあ。」

満更でもない気分にまんまと乗っかり、僕の脳みそはいくらで指値をするかに変わっていた。

断られるのを前提で出した僕の指値は

絶対買わない。買うわけがない。エリア的に田舎すぎて嫌すぎるし客付けできるかどうかもわからない。

しかし僕はある一点でのポリシーとも言える一つの方向性だけはこれまでブラさず突き通してきた。

それは「内見した物件は絶対に買付を入れる」ということだ。

もちろんほしくない物件の場合は大幅に指値を入れるし、内見に連れてきてくれた以上、仲介さんには手間暇をかけているという相手への礼儀として守っている方針だ。

しかしこの物件、どう考えても手間がかからない。たとえ最低家賃で入居が決まったとしても回収も早そうだ。

でもまあ、正直なところ本当は欲しくないし、とりあえずこの金額なら断られるだろう、という数値で半ば適当とも言える数字で出すしかない。

そもそも売値が460万円だし、土地値も500万円を超えている。道路付けもいいし、車も3台停めることができる。リフォームなしでそのまま賃貸に出してしまう方法だってこの物件なら取れる。

もし仮に買えてしまったとしても、客付けはなんとかなるだろう。

そう踏んだ僕が出した答えは「200万円」だった。

さすがにこの状態の物件、200万円なら投資家もすぐさま買付を入れる額だろう。そしてアキラ先生としても断ってくるはずだ。

となれば僕としては「じゃ、いいですぅ」と立ち去るのみだ。

僕「じゃあ、200万円なら買いますよ。」

さあ来い、それはダメでしょう~来い!

「分かりました。ではそれで売主様にお伝えしますね。」

あれ?なんだ?断りなし?んなバカな。そこはもう一歩踏み込んでくるところでしょう!アレ~?

僕「・・・。」

そして念の為に室内写真をパシャパシャと撮り、一通りぐるっと回ったのちに僕たちは猛烈な雨をかき分け車に乗り込み、取手駅へ向かった。

繰り返しになるが、この大雨による適当な内見方法がのちに大きな穴を見落とすことになっていたとはこのときの僕はまだ気がついていない。

翌日アキラ先生から来た電話の内容は

内見を終えた僕はそそくさと電車に乗り込み、ほぼずぶ濡れと言っていい状態で家路に着いた。

そして翌日。アキラ先生から電話が鳴る。

きた、早いな。まあダメでしょう。売主様に怒られて「もう少しなんとかなりませんか?」が関の山だろう。

僕「はいもしもし。」

明「昨日は有難うございました。200万円で売主様ご了承いただけました。つきましては一度資料を持ってオフィスに伺わせていただきたいのですがいつがよろしいですか?」

ぐはー、通ったし!指値通ったし!うそおおん!

僕「まじですか。200万だったら他でもう少し高く売る手段ありますでしょうあの物件なら?」

明「いえいえ、私としてはぜひあなたに買ってほしいのですよ。で、いつがいいですか?」

この人、さっさと終わらせたい雰囲気満載だ。

ぐぬ~、買えちゃったかあ。そうかあ。まあ買えちゃったんならもう仕方ない、腹くくるか!

僕「じゃ、じゃあいついつでお願いします。」

明「承知しました。では伺いますね。」

こうして僕は意図せず買いたくないと考えていたエリアの物件を購入する運びとなった。

ちょうどこれまでの家賃も貯まってきたし、出せない金額ではないし、最低でも利回り20%以上は固く出せるだろうし。やるか。

物件が買えたのにこんな気持ちになったのは初めてだった。

しかし買えたとなれば不思議とワクワクしてくる。

これが当ブログのサブタイトルにもなっている「不動産投資は大人のプラモデルだ」たる所以だ。

ちなみにその後すぐにアキラ先生は我がオフィスにお越しくださり、契約書にサインをさせ、1時間半ほど小話を交わしてホクホクで帰っていかれた。

その後にきたメールが下記だ。

ほんとサイン10分、あとは無駄話1時間以上という仲の良さだ。

決済当日

内見から約1ヶ月の期間を経て僕は決済会場である守谷市へ向かった。

アキラ先生のオフィスだ。

既に前回お願いしていた司法書士の先生もアキラ先生の方で手配している手際の良さだ。

そしてこの司法書士の先生、士業のくせに意外とチャラい。いや全然しっかりされているのだがノリがいいと言い換えるべきか。

アキラと司法書士、僕の三人でゲラゲラ笑いながらどうでもいい、しょーもない会話を交わす。

3人で相対したのは2度目なのに、周りから見ればもうそれは長年苦楽をともにした戦友のようにバカ話をし、その笑い声がオフィス中に響き渡った。

そんな腹を抱えつつ談笑をしているさなかに売主様が現れたため、僕たちは「サッ」とビジネスモードに戻り丁寧に対応する。

売主様は僕と同年代の女性の方で、恐らくはお兄様であろう男性とともにご着席、軽く挨拶を交わして決済は淡々と進んだ。

ふむ。この女性、どこかで見た。確実に見ている。

誰だったか。んぅ~…。

おお!あのお方だ!間違いない、完全にあの御大だ!

おいしい南天のど飴、天童よしみちゃんだ。

「ひとつ他人(ひと)よ~り力持ち~♪ふたつふるさ~と後にして~♪」

「大ちゃん数え唄」を熱唱して欲しい気持ちをグッと抑えながら僕は切り出した。

僕「この度は素敵なお家をお譲りいただき有難うございます。長く住まわれたのですか?」

よしみ「はい、生まれたときからあの家で過ごしていますので、もう40年以上は住んでいました」

いや~どうですか読者の皆さま。

目の前に40年住まわれたお家を手放そうとされていらっしゃる方がいるのですよ。

ある意味での責任と重みを感じながら、僕はこう答えた。

僕「そうでしたか。本当に有難うございます。大事に扱わさせていただくのはもちろん、驚くほどきれいに生まれ変わらせます。差し支えなければリフォームが終わったあとにお写真もお送り致します。」

よしみ「本当ですか!それはぜひ見たいみたい!そう言ってもらえてとても嬉しいです…。」

そうなのだ。家の存在って売主には感慨深さひとしおなのだ。できれば大切に扱って欲しいと願っている人がほとんどなのだ。

僕「はい。恐縮です。今まで何棟も再生させてきました。あのお家ならとっても素敵に生まれ変わると思います。」

言ってしまった。これで素敵リフォームせざるを得なくなった。ノーリフォームで適当に客付けへの道を自ら放棄した。

とはいえ、買ってしまったら自分好みにいじらざるを得ない性分。なんせこのブログのプロフィールにもある通り「おれが住みたいかどうか」「自画自賛できるか」がコンセプトなのだ。

知ってた。おれノーリフォームとかできないこと知ってた。腹くくるしかない。

そんなこんなで無事決済も終わり鍵を受け取った僕は、車に乗り込む頃にはルンルン気分でキャッキャしていた。

「絶対に買いたくないエリア」だった物件にもかかわらずだ。

本当に我ながら思考回路が単純明快だ。

ちなみに決済後にアキラ先生に「ちょっと時間ありますか」と司法書士の先生とともに呼び出され、何事かと思えばスタバに連れて行かれて先程の談笑の続きをするだけの会を開催されるほど僕のことが好きな様子だった。

それはコーヒー代まで出してくれたことからも、僕のことが大好きな加減が伺い知れる。

アキラよ、憎めないやつだ。

決済後に改めて物件を見に行った際に見つけた衝撃の事実

さて決済後からすぐさま物件に向かった僕は、悠々と物件に到着、ワクワクを抑えきれずに鍵を開け、改めて物件を撮影してどう戦略を立てるべきか家の中をぐるぐる歩き回った。

その風景を撮影したのが下記動画だ。

なにやらブツブツ言っているが、購入した後は必ず行う自分ミーティング、恒例の儀式。

動画には入っていないが、撮影を終わって少し落ち着き、もう少しチェックするかと再度2階へ。

そして二階に上がって窓を開けた瞬間、僕の中で旋律が走ることになる。

「はっ!なにこれ、隣がお墓じゃん!」

やってしまった。完全にやらかした。

買わないと決めていたエリアで、なおかつ隣がお墓、だとぉ?

大ダメージだ。ダメージでかすぎくんだ。

あの大雨で、普通なら家の周りをぐるっと一周して見回る。それを雨を言い訳にして怠った顛末だった。

すぐさま僕はiPhoneを取り出しアキラにコールだ。こんなのコールだろ。

僕「もしもし、アキラ先生?なにこれ、お墓の横じゃーん!なんで言ってくれなかったんですか!」

「え~?窓から見えてるかなあ~と思いまして。見てたでしょ?」

僕「いや見てるわけないじゃないですか。あんな雨で窓開けられないし」

明「そうでしたか~。いや~知ってらっしゃると思ってた。」

完全に確信犯でしょこれ。

これだから不動産会社は…。

まあ仕方ない。もう決済したあとだ。どうしようもない。今さら取り消しなどできない。

いやできるかもしれないが、この瞬間悪い癖が出た。思いついてしまったのだ。

「墓の横なのに地域ぶっちぎり最高値で客付けできたらオレ神じゃね?」

なぜ僕はこういう思考になるのだろうか。だからコレまでたくさん苦労してきたのに。ドM。ハードMすぎる。

僕「いや~酷いな~。まあいいや!分かりました!ほんとまた物件紹介してくださいよ!」

明「承知しました、お任せください♪」

よもやお墓の横物件を買うとか思ってもみなかった。

もう一度物件の写真をよ~く見ていただきたい。

購入した物件の裏側がお墓
表からは一切分からず。

ここから導き出される教訓は唯一つ。

「物件周辺はくまなくチェックしろ」

リフォームを重ねるごとに新しい要素を取り込む

さてそろそろこの記事も1万文字を超えてきたため「本かよ」とツッコミが入るほど長引いてきた。

そのためリフォームの詳細は省くが、とにかく僕は毎回リフォームをするたびに新しい要素を吹き込み自分の中でその要素を確認する作業を心がけている。

今回は軽めのリフォームにしておけばほとんどコストは掛からない代物だったことが逆に「コストふんだんに使えるやん?」という逆転の思考が発動、

その思考から生まれた結果がこんな具合。

コンセプトは「取手カフェ」だ。

和室を2つ繋げて作ったリビング
LDKリフォーム後
和室リフォーム後
トイレリフォーム後

僕が調べた限りではこのようにリフォームをしている家は地域で一軒も存在しない。

自分で言うのもなんだが、リフォームをこなすたびにうまくなっている気がする自信作だ。

これは完全にお墓の横でも行けるだろうと踏んだ僕は、当時募集されていた新築の賃料を超える家賃を設定して募集したところ、2週間で申込みをいただく運びとなった。

繰り返しになるがこの物件はお墓に隣接している。

お墓の横は客付けが難しいと言われているし、事実そうだろう。そこも乗り越えることができた。

こうしてまた、僕の中で自信と確信を刻んでくれた物件となった。

やはりアキラ先生には謝辞を申し上げておくべきか。いやそうだろう。

「アキラよ、ナイス物件紹介ありがとな」

賃貸募集用のプロモ動画も作った。

6棟目物件のスペック

  • 場所:茨城県取手市
  • 築年数:45年
  • 間取り:5DK → 4LDKへ変更
  • 販売価格:460万円
  • 購入価格:200万円
  • リフォーム費:120万円
  • 諸経費:30万円
  • 表面利回り:43.8%
  • 実質利回り:25.0%

表面利回りにあまり意味はないが、実質利回りともに僕が持っている物件の中では最高の数値を出すことができた。

長く頑張ってほしい。

コメント

  1. 不動産初心者 より:

    いつも楽しく拝見しています。ありがとうございます。この記事の以下の箇所が良く理解できず、もし可能であれば教えて頂くことができますでしょうか?

    「路線価ベースで見ると千葉県野田市の物件は土地値が付かないのに対して、茨城県取手市の方はギリギリ路線価が付く」とありますが、野田市や取手市は都心に比較的近く、場所的には良い気がするのですが、ダメなのですかね???

    • あうんあうん より:

      銀行が評価するのは相続税路線価なのでこの路線価が付いているかどうかは大きな違いになりますね。

  2. あおば より:

    おはようございます。
    今朝も記事を読んでました。リフォームのレベルが半端なく高いです。
    独学ですか?
    こんなにもきれいに仕上げができるんですね。

    • あうんあうん より:

      あおばさん有難うございます、リフォームはそうですね、独学です。
      色んなリフォームの写真を見まくったり、新築のショールームに行ったり、ふらっと立ち寄ったカフェやお店の作りでステキなものを写真撮りまくったりして未だに集めたりしています。

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