僕が持っている3号戸建物件、有史始まって依頼最強との呼び声が高い台風19号「ハビキス」によって無残に破壊された。
築古である以上いつかは屋根も、と覚悟はしていたが、購入して1年目で早速被害を受けるとは正直夢にも思っていなかった。
その時の具体的な内容は下記。
不動産投資を生業とし、ましてや築古不動産ばかりを手掛けていくとなれば当然雨漏りは大きなネックポイントになりうる。
既に30年、40年、50年と雨風に晒され続けていれば、どんな屈強な物件でもほぼ確実に何らかの腐食や欠損、クラックや破損などのダメージを受けているからだ。
外壁も同様だが、やはり屋根は建物全ての雨を何十年も受け続けて耐えてくれているため、投資家のみならず自分の家を保有しているオーナーにとってもいつかは対応せざるを得ない。
幸いにも、今回僕が対応してもらった屋根職人さんはかなりの腕前であることはもちろん、その知見や今後考えておかねばならないことについて超詳しく話してくれた。
さらに屋根への知見を深めるべく、屋根の素材や耐久年数、そしてそれぞれどんなメリットやデメリットがあるのかを聞いてみたところ、まるでアトランティス大陸が発見できるほど海底深くまで掘り下げて教えていただくことができたのだ。
この貴重な内容について一般の人なら当然知る由もないし、屋根職人さんから具体的に聞ける機会など持ち合わせていないだろう。
ということでこの内容について、またメンテナンス方法について詳しくまとめ上げたのがこの記事になる。
屋根の種類とそれぞれの修繕&メンテナンス方法、メリットとデメリットについて
屋根の種類で現在使われているのは日本瓦、スレート、アスファルトシングル、ガルバリウムの4種類。更に細かく分けられるが一般的に使われているのはこの4種類だとのこと。
それぞれの特徴を踏まえてメリット・デメリットやメンテナンス、修繕方法について見てみよう。
日本瓦
耐用年数 | ★★★★★(約60年) |
価格 | ★☆☆☆☆(8,000~12,000円/㎡) |
メンテナンス | ★★★★☆(約20年で下地要補修検討) |
日本瓦のメリット
- 耐久性が長いため、瓦自体の交換機会が少ない
- 夏は涼しく、冬は温かい
- 基本不燃性なので耐火性にも優れている
- 破損しても一部のみ交換で対応可
- 日本家屋らしい美観
日本瓦のデメリット
- 重要があるため経年で基礎にダメージが行きやすい
- 隙間が空いているため雨漏りに繋がりやすい
- 漆喰交換の手間も出てくる
- 防水シートの寿命に伴い張り直しが必要
- 大きな地震ではズレやすい、また暴風でもズレたりする
- 廃棄する際にコストが大きくなる
日本で昔から使われている屋根材である瓦、説明するまでもないが粘土を焼き上げて作られている。
厚みがあり耐久性は抜群、加えて断熱性や遮音性にも優れている。
これに対して重たさがネック。また雨を完全にしのげるわけではなく、少しずつ瓦の隙間から水が入っているのもデメリット。
台風などで広範囲に被害を受け廃棄処分となると大きなコストがかかるのも懸念点。
瓦の要注意ポイント
頑丈に屋根を守ってくれている瓦だが、ただ被せてあるだけなのでどうしても雨が入ってきている。
そのために瓦の下には「アスファルトルーフィング」、いわゆる防水シートが張ってあるのだが、この耐久性が約20年となっている。
つまり新築から数えると20年目には瓦をどかして防水シートを張り直す必要があるのだ。
下記を見て欲しい。
これは僕の3号棟物件の屋根の下だ。築40年オーバーなので20年はとっくに過ぎているとはいえ、見るも無残な状態。
それはさながら小学生の時に青虫を探すため駆け巡った畑の中のようだった。
雨漏りこそしていなかったが、台風でダメージを受けた軒天補修の際に屋根職人さんが見つけてくれた。
軒天が全体的にダメージを受けている、つまり防水シートが完全に切れていて雨が軒天や屋根内部に侵入、つまり雨漏り寸前だったということだ。
20年経過したらすぐに交換しなければいけないわけではないし、雨漏りが顕在化しているケースも少ないだろう。
けれども瓦屋根の内部はこのように徐々に侵食され、防水シートはその機能を失い、全てが土に帰すべく着々と建物を腐食へ向かわせているのだ。
アスファルトルーフィングの材質にも要注意!
この防水シートの正式名称が「アスファルトルーフィング」だが、実は2種類ある。
アスファルトと”改質アスファルト”だ。
今回ヒアリングさせていただいた我が屋根職人さんいわく、ただのアスファルトだと耐久性は約10年、これが改質アスファルトになると20年へと寿命が伸びる。
もし瓦屋根のメンテナンスをする際には、改質のほうが使われているのかを施工店または職人さんに必ず聞いておくべきだとのこと。
瓦屋根のメンテナンス方法
瓦屋根のメンテナンス方法は下地(防水シートの下にある野路板や杉板など)がある程度問題ない場合と、下地までやられている場合で対処法が変わる。
1)下地が問題ない場合
- 瓦を移動
- 防水シートを除去して新しいシートを敷く
- 桟木を敷く
- 瓦を戻して完成
一言で言えば防水シート(アスファルトルーフィング)を交換する作業と言い換えられる。その際に桟木は防腐剤加工されたものに入れ替えたほうがより長持ちする。
2)下地に問題がある場合
- 瓦を撤去
- 防水シートを撤去して新しいシートを敷く
- 屋根材を敷く
防水シートが完全に切れて野路板(上図囲み部分)まで水が染み込み腐食してしまっている場合は厄介だ。つまりほぼ屋根全部交換、くらいの勢いになる。
普通に住んでいて天井に雨染みが出た頃に対処すればこんな状態にはならないが、長年放置された空き家で空が見えるほど屋根が腐食している物件なら可能性がある。
また3番の「屋根材を敷く」としているのは、桟木を敷いて瓦を戻してもいいのだが、屋根職人さんいわく最近ではガルバリウム鋼板に入れ替える方法が一般的だとのこと。
コストや景観を踏まえてどちらにするかを選択する、という流れだ。
スレート(コロニアル・カラーベスト)
耐用年数 | ★★★☆☆(約20年) |
価格 | ★★★★★(6~8,000円/㎡) |
メンテナンス | ★★☆☆☆(10年で要塗装) |
スレートのメリット
- コスパが一番いい
- 施工期間も短い
- 寿命が約20年
- 耐震性にも優れる
スレートのデメリット
- 10年に一度要塗装(しかも防げる割合は8割)
- 20年で防水シートが寿命になるため交換または被せが必要
- 被せる施工の場合は重さ的にスレート以外の対応になる
- 瓦と比べて特に2階部分(屋根の真下の階)は断熱性に劣る
- アンテナ工事や太陽光工事で人が乗ったときに割れやすい
- デザインが単調
- 表面に苔が生えやすい
費用的なメリットで広く使われているスレート材。
加えて施工のしやすさから、注文住宅ではよく使われている素材でもある。
メリットがコストであるがゆえに、その反面耐久性にやや弱点が。
10年に一度の塗装に加えて、瓦同様徐々に水が染み込んでいくため中の防水シートも徐々にやられていきやすい。
つまりメンテナンス回数が増えたり、寿命を迎えたら全部やり直し、または別の素材で被せて施工する(カバー工法)必要が出てくる点を考慮しておく必要がある。
アスファルトシングル(グラスファイバーシングル)
耐用年数 | ★★★★☆(約30年) |
価格 | ★★★★★(5~8,000円) |
メンテナンス | 基本的に30年以上不要 |
アスファルトシングルのメリット
- 屋根材の中では最安値級
- 耐久性抜群、水がほぼ入らない
- 軽いため耐震性も抜群
- 防火性能もアップ
- 複雑な形状の屋根にも対応可
- 色のバリエーションが豊富
- 長いものでは寿命40年とも言われている
アスファルトシングルのデメリット
- 断熱性や遮音性がやや低い
- 接着剤を使用しているため風で剥がれることがある
- 表面の石が剥がれてくることがある
- 日当たりによって苔やカビが生えてくる場合がある
構造自体はスレートとほぼ同様と考えていい。異なる点は耐久性能の大幅な向上と言っていいだろう。
さらに単価自体もスレートとほぼ変わらないか、モノによっては安くなるため利用するメリットが大きい。
ただし施工技術が高いことから対応可能な職人さんが限られる点や、メンテナンスで塗装をする際には「縁切り」作業(屋根材が重なった部分の塗装を剥がす)が必要になったりもする。
コスパや耐久性、デザインなどを考えても総合的におすすめ度の高い屋根材といっていい。
ただし日本での歴史が短いため、チョイスする場合は施工店や職人さんとよく相談しよう。
ガルバリウム鋼板
耐用年数 | ★★★★☆(約25~30年) |
価格 | ★★★☆☆(6~9,000円/㎡) |
メンテナンス | ★★★★☆(耐用年数ごとに要塗装) |
ガルバリウムのメリット
- 水がほぼ入らないため耐久性が高い
- 薄くて(約0.4mm)超軽量(約6kg/㎡)のため耐震性は抜群
- スレートやアスファルトシングル屋根のカバー工法に向いている
- 施工に手間がかからない
- 防水シートの交換はほぼ考えなくていい
- メンテナンスは塗装のみでOK
- 最近ではデザイン性も向上
ガルバリウム鋼板のデメリット
- スレートやアスファルトシングルよりも単価が高い
- 断熱性や遮音性がやや劣る
- 瓦と比べると2階はやや暑くなりがち
- 25年ごとにメンテ(塗装)を検討する必要がある
- 2000年頃の物件では釘が出て劣化している可能性(施工方法の問題)
軽くて施工性がよく耐久性も高い、そして既存の屋根をメンテナンスする際に葺き替えせずに上から被せて施工するカバー工法で対応しやすいことから今一番使われている屋根材。
他の屋根材と比べて総合力が高い点でいうとイイトコ取りな屋根材だが、唯一のデメリットはスレートやアスファルトシングルと比べて高くなる費用面。
とはいえ日本瓦よりも安いことから、スレートと瓦のほぼ中間あたりに存在するという認識。
また本来葺き替えが必要な屋根の場合でもカバー工法なら剥がす、廃棄する、というコストがカットできるためその分施工費は安くなる。
木造の耐用年数(22年)が切れたあとに被せてメンテできる点でも検討しやすい屋根材だ。
それぞれの屋根を一目瞭然で比較
日本瓦 | スレート | アスファルト シングル | ガルバリウム | |
---|---|---|---|---|
耐用年数 | ◎ 60年 | △ 20年 | ○ 30年 | ○ 25~30年 |
価格 | × 8~12,000円 | ◎ 6~8,000円 | ◎ 5~8,000円 | △ 6~9,000円 |
メンテ | ○ 20年で下地 | △ 10年で塗装 | ◎ 30年で塗装 | ○ 20年で塗装 |
重量 | × 48kg | △ 18kg | ○ 12kg | ◎ 5kg |
耐震性 | × | ○ | ○ | ◎ |
耐風性 | △ | ○ | ○ | ◎ |
遮音性 | ◎ | △ | ○ | △ |
断熱性 | ◎ | △ | △ | △ |
ランニング コスト | ○ | △ | ○ | ○ |
耐久性比較(右に行くほど強い)
スレート < アスファルトシングル < ガルバリウム < 日本瓦
コスト比較(右に行くほど安い)
日本瓦 < ガルバリウム < スレート < アスファルトシングル
廃棄処理について
もし台風など天変地異や雨漏りが酷くなった結果で屋根材を剥がして処分することになる。
瓦の場合は産業廃棄物扱いになるため業者処分対応に。平均的には平米あたり1.5万~1.8万円「処分費だけで」かかるため、例えば2階建て80㎡の建物なら75万~100万円の費用になる。
また、アスベストは平成18年(2006年)より使用が禁止されているが、つまりそれ以前の屋根材にはアスベストが使われていることが多い。
特にスレート屋根にはアスベストが多く使われており、この場合は処分費が通常よりも上がることに。
作業費の考え方:足場代+解体作業費+処分費(アスベストありなしで変化)
ざっくりかかる費用を比較したのが下記。
アスベストなし | 30~60万円 |
アスベストあり | 50~100万円 |
カバー工法はコストを抑えられる有効な屋根メンテナンス方法だが、最終解体する際には二重で作業費がかさむほか、処分費も2倍になるため、最終的にはそのツケを誰かが払うことになる点は知っておいたほうがいいだろう。
我が3号棟物件の屋根修繕の全容
ここからは実体験に基づく戸建て屋根修繕の内容について、施工していただいた屋根職人さんからいただいた画像を元に解説していく。
場所 | 千葉県船橋市 |
築年数 | 42年 |
屋根材 | 日本瓦 |
リフォーム歴 | 42年間なし |
状態 | ・大型台風による軒天破損(全面) ・瓦崩壊 ・漆喰崩壊 ・雨漏りは顕在化していないが内部には水浸入状態 |
火災保険 | 認定 |
経緯については冒頭で紹介した別記事に譲るとして、簡単に書くと、
- 状況12019年10月の大型台風発生
- 状況2同11月物件視察に行ったところ軒天の爆裂を発見
- 状況3火災保険申請(⇒後に認定)
- 状況4同12月軒天修理を職人さんに依頼
- 状況5同12月現調してもらった結果、屋根も大破しているとの報告
- 状況6同12月屋根、軒天井全てを修繕依頼
- 状況72020年1月全体修繕完了
上記の流れで比較的スピーディに修繕を行っていただいたわけだが、驚いたのは軒天だけの修繕のつもりが予想の遥か斜め上、屋根の内部が瀕死状態であることが分かったことだ。
確かに42年間何もしてこなければある程度の覚悟はしていたが、まさかこんな状態だったとは…
次から写真を掲載していくので、築古戸建投資を行っている諸君は覚悟してみてほしい。
3号棟戸建て屋根と軒天修繕内容
いかがだろうか。
特に1枚目の写真は所有者である僕でもかなりのビッグインパクトだった。
まさかきれいに見える瓦の下がこんな土まみれの状態になっているなんて…
これは防水シートであるアスファルトルーフィングが完全に原型を失うほど劣化して水が完全に瓦の中に入り込んだ結果だ。
加えて昔の屋根施工の方法として、防水シートと瓦の間に土を敷いていたようだ。
職人さんいわく、その施工方法は現在では「弱い」という理由で行われていないらしい。
しかし築古物件の屋根の蓋を開けるとだいたいこうなっているとのこと。
そりゃ、いつかは雨漏りしますなこれは。
まとめ
今回は軒天が吹っ飛んだために結果として屋根の中までどうなっていたのかが発覚したが、本来なら雨漏りが顕在化したあとで分かるのが一般的だろう。
裏を返すと、雨漏りが顕在化している物件や軒天がボロボロに剥がれた状態の物件の屋根の中は、僕の物件と同様になっている確率が高いとも言える。
これから物件を購入する際にはこれらのことを知った上でリフォーム費を踏まえておきたいし、投資家のみならずご自身が今住んでいる家の状態についても判断の指針として参考にしていただけたら幸いだ。
屋根は見えないから、と言って甘く見てはならない。
最後に、屋根職人さんに解説してもらった動画も貼り付けておく。
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